赤旗2020年3月24日付
日本共産党の小池晃書記局長は23日の参院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大による深刻な経済危機に対して、国民生活を守る政治の責任が問われていると迫るとともに、森友疑惑にかかわる安倍晋三首相の責任をただし、関係者の証人喚問を求めました。
切実な声に応え直接支援を
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による深刻な経済危機から国民の生活をどう守るのか―。小池氏は、倒産と失業の連鎖を起こさないために中小零細企業の支援は「待ったなしだ」として、融資規模の拡大とともに交付金による直接支援を求めました。
小池氏は、中小企業への緊急融資が実質無利子になったものの予算規模は5000億円にすぎないと述べ、リーマン・ショックの2008年には20兆円の緊急保証制度をつくったと指摘。「けたが違う。大幅に拡充すべきだ」と求めたのに対し、安倍晋三首相は「必要とあれば思い切って拡充をしていきたい」と答えました。
小池氏は「売り上げが激減している観光、宿泊、飲食、バスなど輸送をはじめとする事業者は、融資だけでは危機から救えない」と強調しました。
小池 資金繰り対策だけでなく、交付金などによる直接助成が必要ではないか。
安倍首相 前例にとらわれることなく思い切った対応をしていきたい。
「支援の網から抜け落ちているのがフリーランスだ」。小池氏は、フリーランスへの休業補償が4100円と雇用者の半額なうえ、対象が休校になった小学生のいる家庭のみだと指摘。「228万人といわれるフリーランスの95%には一円も出ない」と訴えました。
小池 フリーランスの支援をなぜ休校だけに限定するのか。政府の要請で収入が断たれた方全体に、政府が休業補償するのが当然だ。
首相 返済免除特約付きの緊急小口資金等の特例を創設する。
小池 返済免除は住民税非課税世帯だけだ。「多様な働き方」といって安倍政権が推進したフリーランスが、政府の要請で窮地に追い込まれている。
小池氏は「無責任だ。収入を断たれたのは休校要請の人だけじゃない」と述べ、重ねて休業補償拡大を求めました。
フリーランスの俳優や音楽家もイベント中止で窮地に追い込まれています。
日本音楽制作者連盟によると首相の中止要請から3月末までに中止・延期した公演は1550公演、450億円に上ると述べた小池氏。広範な団体から切実な声が上がっていると訴え、文化・スポーツ活動などに対し900億クローネ(約86億円)の緊急支援を発表したノルウェーなど各国の文化支援策を紹介。「ありとあらゆる手段で日本の文化の灯を守る責任が問われている」と迫りました。
さらに、俳優や音楽家に正当なキャンセル料が払われるべきだと述べ、「出演者への支払い補償、公演の準備費用や会場キャンセル料の補てんなど、イベント事業者への支援が必要だ。さらに公演再開にむけた感染防止策など全面的支援を」と求めました。
安倍首相は「損失を政府の税金で補償することはできない。文化芸術の推奨発展に何ができるか真剣に考えていきたい」などと答弁。小池氏は「これだけ被害が広がっているのに遅すぎる。ヨーロッパでは直接支援をやっている」と述べ、広範な人たちの声に応えた支援を強く求めました。
■公演中止等に対する対策を求める文化芸術団体一覧
日本音楽家ユニオン
日本俳優連合
日本マスコミ文化情報労組会議
全国公立文化施設協会
日本ベリーダンス連盟
能楽協会
日本演劇興行協会
日本芸能実演家団体協議会
日本モデルエージェンシー協会
日本オーケストラ連盟
日本クラシック音楽事業協会
日本音楽事業者協会
日本音楽制作者連盟
コンサートプロモーターズ協会
チケット適正流通協議会
日本舞台技術安全協会
全国舞台テレビ照明事業協同組合
日本舞台音響事業協同組合
大道具事業協議会
日本コンサート舞台監督連絡会
イベントサポート向上連絡会
小池晃事務所調べ
消費税5%減税の決断迫る
昨年10月から12月のGDP(国内総生産)の年率はマイナス7・1%となりました。1月の景気動向指数は6カ月連続の「悪化」となるなど、安倍政権による昨年10月からの消費税増税が経済に深刻な影響を与えています。
家計消費は、8%に増税する前と比べて、1世帯で年間30万円も減少。小池氏は、この数字は1月までのものであり、新型コロナウイルス感染症の影響ではないと指摘しました。
小池 今の経済危機は消費税増税とコロナ感染の広がりという二つが要因であることを認めるか。
首相 1月にかけて消費税率引き上げそのものの影響は薄らいできていた。
消費税増税の影響をかえりみない安倍首相に小池氏は「1月の家計消費は落ち込んだままである。どこが改善したのか」と厳しく迫りました。
自動車の新車販売数は8%増税時よりも落ち込み、食品の税率を据え置いてもスーパーマーケットの売り上げは下落しています。小池氏はこうした数字を取り上げ、安倍政権が「増税対策」として打ち出してきたポイント還元事業や自動車減税は効果がなかったと強調しました。
小池 10%の消費税をそのままにしておいて経済危機を乗り切れるのか。
首相 消費税の増税は全世代型社会保障へ改革していくために必要なものだ。
「社会保障のため」と言いつのる安倍首相に対し、小池氏は「国民の所得が激減すれば、そもそも社会保障は成り立たない」と主張しました。
来年度予算案は、昨年12月に発表された7~9月期の実質GDP成長率プラス1・8%という数字をもとに編成されました。しかし、消費税増税による景気悪化でその後、プラス0・1%に大幅に下方修正されました。
消費税増税後の景気悪化を反映していない来年度予算案では対応できないと迫る小池氏に対し、安倍首相は経済政策の手段としては、「消費税も含めたさまざまな税制もある」と否定しませんでした。
小池氏は「日本共産党は景気悪化の中で増税することは経済と国民の暮らしに深刻な打撃を与えると警告してきた。その通りになった」と批判。消費税の減税は、全ての人、とりわけ低所得者の家計を一気に温め、必ず消費活性化につながると強調しました。
その上で「野党のみならず、自民党内からも減税の声が出ている。5%への消費税減税に踏み切るべきだ」と安倍首相に求めました。
森友公文書改ざん 「手記」に新たな事実が
遺族は公正な再調査を要求
小池氏は、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題での安倍首相の責任を追及し、徹底的な真相解明のため再調査を求めました。
小池氏は、安倍首相の「私や妻が関係していたならば、総理も国会議員も辞める」との発言から、当時の近畿財務局職員の赤木俊夫氏が文書改ざんを強いられ精神的に追い込まれていった経過(表)を示し、「文書の改ざんを命じられ、加担した自分の責任と犯罪行為に問われるのではないかという恐怖の中で、まじめな一人の官僚が自ら命を絶った」と指摘。安倍首相の責任を追及しました。
安倍首相は「麻生太郎財務相が、総理答弁が問題行為のきっかけになったとは考えていないと答弁された」と言い逃れようとしました。
小池氏は、改ざんで削除されたのは「いい土地ですから前に進めてください」という発言など安倍昭恵氏の関与を示す記述5カ所だと指摘。「財務省理財局が文書を改ざんしたのは、首相と妻の昭恵氏の関わりを隠ぺいすること以外に理由はないのではないか」と迫りました。
首相 国会審議において森友案件が大きく取り上げられる中で、さらなる質問につながる材料を極力少なくすることが主たる目的だったと報告がなされた。
小池 さらなる質問につながる内容とは首相と昭恵氏のかかわりだ。その記述を削除する。まさに関与を隠ぺいするために改ざんが行われた。
首相 それは小池委員の見解だ。見解が違う。
小池 一人の命が絶たれたことを見解の違いで片づけるのか。目を背ける態度は許せない。
小池氏は、「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました。麻生大臣は墓参に来てほしいと伝えたのに国会で私の言葉をねじ曲げました。この2人は調査される側で再調査しないと発言する立場ではないと思います」との赤木氏の妻のメモを紹介し、「この声をどう受け止めるのか」と迫りました。
小池 一人の財務官僚が命がけで訴えた詳細な記録が公表された。遺族は第三者による客観的で公正な再調査を求めている。ただちに再調査することが最低限の責任ではないか。
首相 (赤木氏の手記と財務省調査報告書の)両者において大きな齟齬(そご)はない。
小池 手記はすべて佐川(宣寿元理財局長)氏の指示だとしている。全く違う。
小池氏は、18年4月の参院財政金融委員会で日本共産党の大門実紀史議員が当時残されたとされたメモについて質問し、当時の太田充理財局長(現財務省主計局長)が「委員がおっしゃるとおり核心部分だ」「真相解明は全く同じ気持ち」と答弁していることを指摘。「この気持ちが真実ならば再調査するべきではないか」と求めました。太田氏は現在のポストをたてに「答弁する権限を有していない」と回答を拒否。小池氏は同氏の証人喚問を求めました。
さらに、小池氏は、赤木氏の妻が「調べたら自分たちに都合の悪いことがいろいろ出てくると思っているからじゃないですか」と述べていることを指摘し、「赤木さんの妻が提訴までして真相解明してほしいと言っている。少なくともこれに応えるのが人の道ではないか。再調査しないと切って捨てる姿勢でいいのか」と追及しました。
首相 財務省において徹底的な調査がなされ、結果は明らかになっている。
小池 まったく応えようとしない驚くべき態度だ。
小池氏は、改ざんへの佐川氏の指示など手記で明らかになった新たな事実を指摘し、「それでも再調査しないのなら、首相自ら答弁したとおり首相も国会議員も辞めるしか残された道はない」と強調。「財務省のお手盛り調査で終わらせるわけにはいかない。まじめな職員が命を絶ち、国会でウソがまかりとおることを許すわけにはいかない」と述べ、佐川宣寿元理財局長、太田充前理財局長と、「遺書」に登場する美並義人・前近畿財務局長(現東京国税局長)、中村稔・前理財局総務課長(現イギリス公使)と、安倍昭恵氏の証人喚問を要求しました。
森友公文書改ざん問題の経過
2017年
2月17日 安倍晋三首相 「私や妻が関係していたということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」(衆院予算委員会)
2月22日 菅義偉官房長官の会合 佐川宣寿理財局長(当時)ら参加
2月24日 佐川理財局長 「交渉記録はない」「速やかに廃棄した」(衆院予算委員会)
2月26日 赤木俊夫氏 文書改ざんを指示され、出勤して第一回の作業(「遺書」より)
3月7日ごろ 文書改ざんの指示が複数回 赤木氏「私はこれに相当抵抗しました」(「遺書」から)
11月22日 会計検査院報告書公表2018年3月7日赤木俊夫氏自死(享年54)
6月4日 決裁文書の改ざんに関する財務省調査報告書
出典:森友問題報道や国会議事録と公表された赤木俊夫氏の遺書等から小池晃事務所が作成