赤旗2020年1月27日付
日本共産党の小池晃書記局長は26日のNHK「日曜討論」で、通常国会での本格論戦に向け、「桜を見る会」疑惑、カジノ汚職、中東への自衛隊派兵、憲法改定などについて各党代表と議論しました。
通常国会にどう臨むか
まず、通常国会の論戦にどう臨むかを問われ、自民党の稲田朋美幹事長代行は「補正予算、当初予算の早期実現が最大の景気対策だ」と述べ、さらに「全世代型社会保障」や「憲法の建設的議論」を課題に挙げました。
小池氏は、施政方針演説や衆参両院での代表質問で安倍首相が「桜を見る会」やカジノ汚職などについて一切語らなかったと指摘。「政策以前の問題として安倍政権の政治姿勢が問われている。安倍首相の不誠実さが極まった」と述べ、今週から始まる予算委員会での質疑で野党共闘をいっそう強めて徹底的に追及すると語りました。
また、安倍首相がアベノミクスはうまくいっていると述べるだけで国民生活の苦しさにも日本経済の低迷にもまともに向き合おうとしなかったと述べ、「国民の切実な願いを実現し、希望がもてるような政治を切り開く論戦をしたい」と強調しました。新型コロナウイルス対策についても「党派を超えた課題としてとりくみたい」と述べました。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は「政策論議にふたをしている責任は安倍首相・与党にある」と述べ、「桜を見る会」やカジノ汚職、政治とカネの問題などで「政府・与党が情報開示することが議論のスタートだ」と主張しました。
予算審議と経済政策
小池氏は、自民・稲田氏が最大の経済対策は予算の早期成立だと述べたことに対して、「最大の経済対策は庶民の懐を温めることだ」と主張。消費税増税以来、家計消費は冷え込み、景気動向指数は4カ月連続マイナスだと述べ、安倍首相が施政方針演説で「来年度の税収は過去最高だ」と誇ったことに対しても「消費税が17兆円増える一方で、法人税は6兆円、所得税は8兆円減っている」と指摘。「『税金といえば消費税』の一本やりでやってきたことが家計を冷え込ませ、格差を拡大して、日本を成長できない国にした」と批判しました。
その上で、「アベノミクスで潤う富裕層や、史上空前の利益を上げて400兆円超もの内部留保をもつ大企業に応分の負担を求め、消費税は緊急に5%に戻すべきだ」と述べ、暮らしを応援する政治への転換を求めました。
自民・稲田氏は「増税の影響が少ないタイミングを計り、反動減対策も十分やった。前回の増税時と比べ格段に影響は小さい」と強弁しました。
国民民主党の平野博文幹事長は「アベノミクスは成功というが、国民は苦しんでいる。なぜ今消費税増税をするのか」と述べ、立民・福山氏も「アベノミクスの限界はもう明らかだ。アベノミクスをどう変えるかの議論をこの国会でしないといけない」と語りました。
カジノ汚職
秋元司・元カジノ担当副大臣がカジノ関連業者から賄賂を受け取ったとして逮捕されたカジノ汚職をめぐって、小池氏は「収賄等の不正行為を防止し、選定の公正性・透明性を確保すること」とするカジノ実施法の付帯決議を挙げ、「自民党もこの付帯決議に賛成したのだから、最優先で全容解明をする責任がある」と強調しました。
さらに、カジノ事業者との接触禁止ルールを設ける政府の動きについて、2017年2月に安倍首相がトランプ米大統領と初めて会談をした際、米カジノ大手の経営者が同席していたことを指摘し、「最初に(カジノ事業者と)接触したのは安倍首相だ」と告発。「カジノは刑法が禁じる賭博だ。額に汗して働く、ものづくりでも何でもなく、不幸な人をつくるだけだ。カジノは廃止すべきだ」と力を込め、野党が共同提出したカジノ廃止法の成立を求めました。
国民・平野氏は、カジノを「成長戦略の目玉」だとする安倍政権に対し、「人の不幸、賭博で経済を活性化するという政策は極めて不健全だ」と一喝。立民・福山氏は「日本の成長戦略にカジノはいらない。やめるべきだ」と強調しました。
自民・稲田氏は、「統合型リゾートのうちカジノの占める面積は3%だ」などと破綻済みの主張を繰り返し、あくまで推進する姿勢を示しました。
中東への自衛隊派兵
中東情勢について、小池氏は「日本共産党の志位和夫委員長が代表質問でアメリカによるイランのソレイマニ司令官殺害という軍事力行使を是とするか非とするかと聞いたが安倍首相は答えず、トランプ米大統領の呼びかけに事実上、応えて自衛隊を派兵した」と批判。年明けに安倍首相が訪れた中東3カ国のうち2カ国は米主導の「有志連合」に参加していることを指摘し、「これでは、日本はトランプ政権の側に立つと宣言しているようなものだ。トランプ政権言いなりに自衛隊派兵を続けることは、軍事的緊張をいっそう強め、自衛隊員を危険にさらすことになる。米国に対してイラン核合意への復帰を説く外交努力こそ、徹底してやるべきだ」と強調しました。
立民・福山氏、国民・平野氏も国会閉会中に派兵を閣議決定したやり方や、「調査・研究」という位置づけについて疑問を呈しましたが、自民・稲田氏は日本の原油の9割は中東沖を通るなどと述べ、派兵を正当化しました。
「桜を見る会」私物化
「桜を見る会」疑惑で小池氏は「安倍首相の『招待者のとりまとめには関与していない』との答弁に合わせ、官僚が首相や官邸の意向を忖度(そんたく)し、都合の悪い公文書は廃棄し、改ざんした資料を国会に提出している」と指摘。「安倍首相が正直に真実を語れば、たちどころに解決する。与党も首相・官邸にものを言うべきだ」と迫りました。
立民・福山氏は招待者名簿の電子データ消去時の端末記録や、東京都内のホテルで開かれた安倍後援会の「前夜祭」の明細書を公開すべきだと主張。国民・平野氏も「公文書を隠ぺい・改ざんしている」と非難しました。
自民・稲田氏は、安倍首相に関わる疑惑に一切触れず、「(桜を見る会は)抜本的に見直す」などと述べるだけでした。
憲法改定
小池氏は、憲法をめぐって、「カジノ疑惑でも桜を見る会の問題でも、憲法の保障する国民の知る権利や立法府の権限、個人の尊厳がないがしろにされている。中東沖への自衛隊派兵でも9条が踏みにじられている」と強調。「安倍政権の下であまりに憲法に背く政治が続く一方で、憲法尊重擁護義務を課された首相が憲法改定を『私の手で成し遂げたい』などと言うのは言語道断だ」と指摘し、「政治がやるべきは、憲法を無視した政治を変え、憲法に基づく政治を実現することだ。立憲主義を取り戻し、格差是正やジェンダー平等、多様性と個人の尊厳を尊重する政治を実現することこそが、国会議員の責任だ」と述べました。
立民・福山氏は「行政府の長である首相が国会で改憲、改憲と言うのはいかがなものか。まず憲法の順守について何をすればいいか、首相をはじめ与党にはしっかり考えていただきたい」と述べました。
自民・稲田氏は憲法審査会での国民投票法改正案の成立を求めるとともに、「共産党は自衛隊が違憲だという。立憲主義というなら憲法に自衛隊を位置付けることが重要だ」と、立憲主義の理念をゆがめて主張。小池氏は「立憲主義を守るとは、憲法違反の海外派兵などやめることだ」と反論しました。