赤旗2020年1月3日付
日本共産党書記局長 小池晃さん
裁縫家・漫画家・イラストレーター ワタナベ・コウさん
編集者・ライター ツルシカズヒコさん
小池晃 新年おめでとうございます。
ワタナベ・コウ、ツルシカズヒコ夫妻 おめでとうございます。
小池 昨年の参院選では、市民と野党の共闘が大きな力を発揮して、自民・公明や維新など改憲勢力の議席を3分の2以下に追い込むことができました。
これからは、共闘の前進とともに、共闘の中で共産党を躍進させることが、私たちの大きな課題です。そのためには、「共産党だから投票しよう」という積極的な支持者を日常的に増やすために、共産党を「まるごと」知っていただくことがどうしても必要です。
14日からの第28回党大会でも、しっかり議論したいと思っています。
きょうは、『日本共産党発見!!』という素晴らしい本を出されたワタナベ・コウさんと、「しんぶん赤旗」で「ツルシのぶらり探訪」という旅記事を書いていただいているツルシカズヒコさんのご夫妻に、共産党について「発見」したことを中心に、共産党を「まるごと」語っていただきます。
共産党の全体像を知ってほしい―まるごとアピールするといい
ワタナベ 『日本共産党発見!!』(以下、「発見!!」)は、春に第3集が発行されます。よろしくお願いします。
取材で地方議員の方にもお会いしますが、選挙のときは個人的な信頼関係で投票してもらっているという方もいらっしゃいます。私たちはこれまで共産党と出会えなかったから余計に思うのかもしれませんが、もっと「共産党、共産党」とアピールした方がいいと思います。共産党に投票すればこう変わると知らせるとか…。
小池 きっかけは困りごとの相談などだったとしても、その後もずっと党の支持者になってもらうためには、共産党の全体像を知ってもらわなければいけませんからね。
ワタナベ 「赤旗」も、つながる手段に加えて、新聞としても面白いという中身もまるごとアピールするといいと思います。
小池 そうですね。政治面だけでなく、文化欄や「たび」欄も。
ツルシ 私も「たび」の取材を通じて、共産党のことをだんだん知るようになってきました。イラストはワタナベ・コウが担当しています。
小池 反戦詩人の槇村浩、作家の小林多喜二、戦前の女性活動家・伊藤千代子などのゆかりの地を、共産党の歴史と結んで、訪ねておられますね。
ツルシ ええ。槇村さんのときは、案内してくれたのが元赤旗記者の方。戦争を加害、被害、抵抗という三つの視点でみないといけないということを知りましたし、「赤旗」だから書けた記事でした。
小池 食いしん坊の私にとって、見逃せないのが食べ物の話です。宮本百合子の処女作の地である福島・郡山を訪ねた回では、ローカルフードの「クリームボックス」といった具合に。その土地、土地の、おいしい食べ物が次々に登場します。
ツルシ 歴史とかある程度調べていくんですが、担当者から「動いている感じを出してください」と言われるんです。食べ物は大事だと思ってます。
現在―当たり前のことを当たり前にいう党だった
党大会に行ってビックリ―共産党員は「隠れて」いなかった
小池 「発見!!」や「探訪」のきっかけになったのは、赤旗記者との出会いでしたね。
ワタナベ 私の裁縫教室に生徒として参加されたんです。同じ世代の普通の人でした。それまで共産党が戦争に反対した政党という認識はありましたし、選挙のときは自民党からもっとも遠いから共産党に投票していましたけれど、「共産党員というのはどこにいるんだろう」という感じでしたから、びっくりでした。
小池 それまでは、どんなイメージ?
ワタナベ 私はいわさきちひろの絵が好きだったんですが、高校時代に何人かでその話をしていたとき、その中の一人が「でも、ちひろは共産党員なんだよね」と言ったんです。そしたら、その場が凍り付いたのを覚えています。
小池 ちょっと怖いイメージですか?
ワタナベ そこまでいかないけど、実際に共産党員に会ったことがなかったので、隠れている存在なのかなとは思っていました。
小池 いまはどうですか?
ワタナベ 「発見!!」の取材で前回の党大会に行ったんですよ。隠れているどころか、そこだけで1000人もの党員がいた。恥ずかしながら驚きましたね。それにみなさん、本当にまじめで寝ないでノートをとっていてすごいなあと思いました。
小池 コウさんのイラストで、党大会の様子が、生き生きとよみがえりましたね。
ワタナベ 若い人がたくさんいたのも驚きで、イラストに描いた福島の大橋沙織さんは昨年、県議会議員になったんですね。
警察も「困ったときは共産党へ相談を」―草の根の力が決定的
小池 共産党はいま党勢拡大に取り組んでいます。いろいろ苦労もありますが、それでも約28万人の党員がいて、支部は小学校の数とほぼ同じの1万8千。地域のすみずみにネットワークを張り巡らせています。警察に相談にいったら、「困っているんだったら、共産党に行け」と言われたという話があるんですよ。
ワタナベ・ツルシ へえ、面白いですね。
小池 党大会に向けて支部総会を開き、地区党会議を行ったうえで、都道府県党会議。そうやって議論し、練り上げたものを党大会でさらに討論し、決定します。その決定を、県、地区、支部に返していって、みんなで実行する。全国津々浦々に草の根の党組織があって、それが綱領で一つに結ばれた集団です。財政的にも、企業・団体献金にも政党助成金にも頼らないで自立し、100万人の「しんぶん赤旗」読者に支えられている。これらが、他の党にはない決定的な力です。
ワタナベ 私、マスコミ席に座っていたんですけれど、記者も大会の様子に驚いていましたよ。
SNSで親しみ覚えた―入党は必然の土台の上に偶然が
ツルシ ぼくは、SNSを通じてますます共産党に興味を持ちましたね。“ユーチューバー小池晃”をチェックしていて、(東京・北区の)赤羽のスナックでブルーハーツの曲を歌っている場面とか。医師時代に自分を育ててくれた看護師さんの話もよかった。なかなかああいうことをさらけ出せる国会議員はいないですよ。
小池 お恥ずかしい。
ワタナベ 「発見!!」の第1回取材は、田村智子さんだったんですけれど…。
小池 いま「桜を見る会」追及の「タムトモ」として有名です。
ワタナベ そうですね。私自身は、「なんとなくクリスタル」がはやったバブリーな世代だと思っているので、同じ時代に大学で活動して民青に入って共産党員になった人がいたんだとびっくりして。どうやって共産党と知り合うのかなと興味をもったんです。
小池 田村さんの場合は、早稲田大学の学園祭の不正をただすたたかいや、学費値上げ反対運動がきっかけだったそうです。
ワタナベ みなさん、いろいろなんですね。畠山和也さん(衆院北海道ブロック比例予定候補)に入党のきっかけを聞いたとき、人との出会いは「偶然です」とおっしゃっていましたけれど。
小池 共産党に入党するのは、偶然の部分もあるんですけど、必然の部分もあると思うんです。私の場合は、高校生のときに当時の福田内閣が「有事立法」の研究を始める動きがあって、「戦争は絶対にだめだ」と思ったとき、民青に入っていた友達から誘われました。世の中の動きを見たり、学んだりする中で、戦争はいやだ、不正義は許さないという土台がつくられ、そこに偶然の出会いが結びつくんだと思います。
ワタナベ みなさんまじめですよね(小池「コウさんもまじめじゃないですか」)。今はまじめになったんですけど(笑い)、共産党発行の『月刊学習』で連載するようになって、基本的なことを繰り返し書く大事さを学びました。エンターテインメント系のメディアで絵や文をかいていたときは、原理原則を外す、当たり前のことは書かない。目をとめさせるために、「個性的に」書くとか…。そういうまじめさをバカにした果てが歴史修正主義かなと思うんですけれど。
とにかく「読者を猿と思え」と言われましたね。マスメディアの特権意識だと思いますけど。いまはやっぱり当たり前のことを書くのが大事なんだというのを、「赤旗」をよんだり、実際に書いたりしてすごく思います。
小池 共産党のイメージは当たり前のことを当たり前に言っているということですか?
ワタナベ 実際にそうだし、大事なことです。
辺野古の座り込みは党と住民の集会から始まった―市民と野党の共闘の源流に
ワタナベ 沖縄に取材に行ってきたばかりなんですが、ほんとうにひどいですね。沖縄全体が基地のなかに暮らしているような状況でした。
小池 沖縄では、一番いい場所が米軍に奪われていますから。
ワタナベ だから交通渋滞がひどいですね。
小池 先日、沖縄の緑ケ丘保育園のお母さんたちが国会にいらしたんですよ。3年前、米軍ヘリの部品が落下した保育園ですが、状況は、より悪くなっているというのです。1日何度も保育園の上を大型ヘリや飛行機が飛んで、子どもたちはおびえていると。保育園もお母さんたちも、「保育園の上を飛ばないで」と求めているだけなのに、それすら聞いてもらえない。これでほんとうに主権国家と言えるのでしょうか。
安倍首相はトランプ大統領に「保育園の上を飛ぶな」というべきです。そして、普天間基地の無条件撤去を正面から迫るべきです。
ワタナベ 今回調べたら、辺野古新基地建設反対闘争の始まりは、地元住民14人が参加した共産党の集会だったと知りました。
小池 1997年1月、沖縄県委員会と北部地区委員会の主催で行われたヘリ基地問題の学習会ですね。
ワタナベ それがどんどん大きくなったというのはすごいと思いました。
小池 キャンプ・シュワブ前の座り込みが始まったのが2014年7月。安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を行った時です。その年の暮れに「オール沖縄」の翁長雄志(おなが・たけし)知事が誕生します。沖縄でのたたかいに呼応するかのように、国会前にも多くの市民が集まり、戦争法反対の声をあげました。沖縄のたたかいが日本中に広がり、国政レベルでの市民と野党の共闘に結実していったのですから、沖縄はやはり源流ですね。
ハンセン病―協力はするが自ら立ち上がること
ワタナベ 昨年、「発見!!」の取材でもう一つ印象に残っているのが、ハンセン病のことです。群馬の栗生楽泉園を訪ねたんです。もともと感染力が弱く、治療薬も開発されていたのに、日本では1996年まで隔離政策が続けられ、そのもとで重大な人権侵害が行われました。
群馬では、いち早く患者たちが立ち上がり、「重監房」という懲罰施設を1947年に廃止させます。そのきっかけになったのが、日本共産党の中央委員だった伊藤憲一さん(のちに衆院議員)。草津温泉の療養にいったときに、栗生楽泉園の不正経理や「重監房」のことを知ったのです。そこで開かれた共産党と患者の懇談会で、共産党側から「私たちは協力は惜しまないが、闘争を共産党に請け負わせるのは違う」という趣旨の発言があり、患者たちが立ち上がったという話を知り、共産党の役割は大きかったんだなと思いました。
ツルシ 私もハンセン病に興味を持ち、岡山県の長島愛生園に行きました。そこでも自分たちで自治会をつくって主体的に改善していく。ああいうのが民主主義だと学びました。「赤旗」日曜版に掲載予定です。
ワタナベ 楽泉園では、詩人の谺(こだま)雄二さんらが55年に共産党栗生細胞(現支部)をつくります。2004年の日本共産党大会で谺さんが発言されたんですよね?
小池 ええ。谺さんが、戦後日本共産党に加わった半生をふりかえりながら、「日本共産党はわが家」「同志は新しい家族」と確信をこめて語られ、心揺さぶられました。ハンセン病のたたかいでは、共産党が療養所の中でも大きな役割を果たしましたし、国会でも政府に対策を迫りました。
いま言われたように、「共産党だけがたたかう」のではなく、「ともにたたかう」。当事者が自ら立ち上がることを大事にして、共産党も「わがこと」として、ともにたたかうというのが、どんな運動でも大事なことですね。
ワタナベ そうしたたたかいが、昨年のハンセン病家族訴訟での勝利和解につながるんですね。
歴史―「日本の進歩と変革の伝統」を受け継いで
秩父事件で「発見」した源流とは
ツルシ ぼくが一歩踏み込んで共産党のことを知ることになったのは、秩父事件の取材が大きかったですね。2017年の春にワタナベ・コウとふたりで取材に行った時、事件に参加した人のお孫さん―共産党の町議を長くやってらした新井健二郎さんにガイドをしてもらいました。この取材を通じて、秩父事件は日本国憲法や民主主義にものすごくかかわっている問題なんだなと知るわけです。
同時に、共産党の方々がなぜ秩父事件を重要視するのかを知りたかったんです。そうしたら、新井さんの次男で共産党の葛飾地区委員会で活動しておられる新井杉生さんが、日本共産党の綱領を紹介してくれました。その冒頭には、「日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受けつぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで…創立された」と書いてある。自分たちの活動の源流になっているのが、そうした「進歩と変革の伝統」であり、その一つが秩父事件だったのではないかというわけです。綱領で最初に心に突き刺さったのはそこでした。
小池 綱領の「重み」を感じるお話です。
ツルシ 新井杉生さんは自分たちはいま、戦前に反戦平和を掲げて命をかけてたたかった人たちにすごく励まされるけれども、その党をつくった人たちはたとえば、秩父事件で立ち上がった農民たちの伝統を糧に行動したのではないかと。なるほどと思いました。
小池 ツルシさんが「赤旗」の別の企画で取材された「五日市憲法草案」(1881年起草、現東京都あきる野市で発見)も、たたかいの源流の一つですよね。自由民権運動が積み上げてきた成果が、戦後の民主主義の土台をつくったのですね。改憲勢力は「日本国憲法はアメリカが押し付けた」などというけれど、戦前から脈々と受け継がれた人々の思いが結実したのが、日本国憲法なんですね。
そうした「進歩と変革の伝統」を受け継いだ党の一員であることに、誇りを持ちます。
「天皇の制度」にすっきり―憲法の縛りのもとにある制度
ツルシ 綱領に関して、すっきりしたのは天皇問題です。いまの制度を「天皇の制度」という言葉を使っているじゃないですか。昭和天皇は大日本帝国憲法のもとで戦争を遂行した最高責任者。戦後の天皇は違うんだ、日本国憲法の縛りがあって、そのもとでの制度の一つにすぎないんだ。だから「天皇の制度」としてみるんだというのは、非常にわかりやすくていいなと思いますね。
小池 日本国憲法の大原則は国民主権です。そのもとに「天皇の制度」がある。だから、戦前の「絶対主義的天皇制」という国家体制の頂点にある「天皇制」とは違う。国民主権であり、国政に関する権能を持たないのだから「君主制」の国でもない。こうした憲法の規定を厳格に守って運用するというのが、共産党の立場です。
ワタナベ とにかく共産党は天皇がだれになっても、天皇制を否定しているんだと思っていました。
小池 誤解なんですね。綱領で、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」としているのですから。同時に天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱は是正しなければなりません。
その点で、昨年の代替わりの儀式については、国民主権や政教分離の原則に照らして、大きな問題がありました。「即位礼正殿の儀」では、神によって天皇の地位が与えられたことを示す「高御座」(たかみくら)から天皇が言葉を述べ、その下に立つ首相がお祝いの言葉をのべて万歳三唱。国民主権や政教分離の原則とは両立しない、深刻な問題をはらむものでした。
ツルシ あのときの安倍首相の得意そうな顔ね。
ワタナベ 万歳のシーン、テレビで映す必要はないと思いました。
小池 それから大嘗祭(だいじょうさい)。これは完全な宗教上の儀式ですからね。
ワタナベ 天皇家が私的にやる分にはいい。
小池 ところが事実上の国家的行事として多額の公費(宮廷費)がつぎ込まれてしまった。今の憲法にもとづく、新しいやり方をつくりだすべきでした。
野党なのに外交をしていた!―侵略戦争と植民地支配に反対した党ならでは
ワタナベ 共産党についての「発見」では、野党外交をやっているのにはものすごく驚きました。外交は政府だけがやるものだと思っていたので。
小池 野党が外交に取り組むことの意味は大きいと思っています。特にわが党は、侵略戦争と植民地支配に反対したという、他の党にはない歴史をもっていますから。
ワタナベ そうですね。とりわけアジアで大きいですよね。志位さんも、韓国の大学に呼ばれていったんですよね。
小池 ええ。韓国の高麗大学や建国大学などに招待され、講演も行ったんです。
いま日本と韓国との外交関係が悪化していますが、その原因は、「徴用工」問題です。この問題は植民地支配のもとでの重大な人権侵害ですから、被害者の名誉と尊厳の回復が必要です。日本政府は「解決済み」というけれど、日韓請求権協定や日韓条約を結んだときに、日本政府は植民地支配の不当性を認めていなかったのですから、「解決済み」であるはずがない。植民地支配への真摯(しんし)な反省を土台にしてこそ、解決の道が開かれます。そんな話をすると、韓国の人たちも心を開いて、率直な対話ができるんです。共産党だからこそできる「外交」ですよね。
未来―世界史のなかでも前人未到の道へご一緒に
ジェンダー平等でビビッドに動いていた!
ツルシ ぼくは『週刊SPA!』の編集長をやっていたんですが、その『SPA!』が“性関係を持ちやすい”女子大学生を順位付けするという記事を掲載し、女子大生が抗議し、ネット署名が5万も集まるという“事件”が昨年起きたんですね。そのときに、ぼくも事件を追っていたんですが、やはり「赤旗」の記者さんが素早く動いていて、一緒に取材に行ったりしました。
それから「JCP With You」というチームを立ち上げて、集会・イベントを持たれましたね。最初のイベントには小池さんもいらした。(小池「ええ」)。衆院東京12区の予定候補者である池内さおりさんの事務所(12ハウス)での集会には、志位さんもいらっしゃった。あの取り組みをみて、ジェンダー平等で立ち上がった人たちと一緒にやっていくんだという姿勢がビビッドに(=生き生きと)感じられて、この党は信頼できるんだなって思うわけです。
小池 たたかいの現場にどんどん出て行って、勉強させてもらっています。
ツルシ ジェンダー平等は綱領改定案でも打ち出したじゃないですか。非常に大事なことだと思っていて、ジェンダー問題は、世代とか性を超えたテーマなので、共産党の取り組みはいいなと思うんですよね。
小池 共産党は、戦前から男女同権を掲げ、たたかってきた政党です。いまの新しい動きに大いに学び、共産党ならではの役割を果たしたいと思っています。
党自身もさらに努力を
ワタナベ 共産党自身はどうなんですか。本部勤務員に女性が少ないですよね。
小池 およそ4人に1人です。それでも、「しんぶん赤旗」の編集局では、20代、30代、40代では4割が女性記者で、大活躍しています。国会秘書も100人のうち42人が女性で、政策活動や質問づくりに奮闘しています。国会議員は衆院では12人中3人で、参院では13人中5人が女性です。
ワタナベ 地方議員は断然多いんですよね。
小池 そうですね。地方議会では、共産党が女性議員第1党です。しかし、甘んじることなく、もっともっと努力しなければ。
ジェンダー平等の問題では、日本は世界の流れから大きく立ち遅れています。その原因には、戦前からの男尊女卑の政治思想に加えて、財界が企業のもうけをジェンダー平等よりも優先していることがあります。共産党はこうした事態を打開するために、党内でも党外でも頑張ります。
ワタナベ 小池さんは自宅ではどうですか。
小池 どきっ。家事は分担して、「つくる関係」はパートナーで、「片付け関係」は私ですが、日々反省しながら努力しています。
中国問題の綱領改定案にすっきり
ツルシ 綱領に関しては、今回中国に関する評価もきちんと出したじゃないですか、それもすっきりするわけですよ。
小池 中国についての指摘は、今回がはじめてではなく、6年前の党大会で「覇権主義や大国主義が再現される危険」を警告し、3年前の大会では「新しい大国主義・覇権主義の誤り」を批判しています。前大会後の3年間の中国の行動を見ると、核兵器禁止条約に反対し、核兵器を増強する。尖閣諸島では領海侵入を繰り返し、南シナ海では軍事拠点をつくる。国際会議ではみんなで一致して決めたことを一方的に覆し、日本共産党に「覇権主義」という悪罵を投げつける。そして、香港やウイグルでの弾圧と人権侵害ですね。
ツルシ 人権問題は国連憲章からみても国際問題ですよね。
小池 その通りです。ですから、私たちは弾圧の中止を求めています。
ワタナベ 志位さんがきちんと抗議したことに対して、香港の市民集会で感謝されていましたね。
ツルシ 共産党というと中国共産党と同じかと誤解されると思うんですが、その誤解を解くためにもいい表明ですよね。
小池 それも大事なことですが、世界の平和と進歩のためでもあると思っているんです。中国を正面から、事実と道理をつくして批判する動きは世界でも弱い。日本政府は、抗議も批判もしない。だから、日本共産党のきっぱりとした弾圧批判に、香港市民も注目したのだと思います。
先日、自民党の議員が志位委員長のツイッターをコピーして国会で配って、「日本共産党が中国に抗議している、政府はもっとモノをいうべきだ」と発言しました。自民党席から「共産党、立派だ」という声援が飛んだんですよ。(笑い)
選挙で政治変えられる―日本でも選挙にいって野党連合政権を
ツルシ 香港の事態でいえば、区議会議員選挙で民主派が圧勝したじゃないですか。勇気づけられましたね。
小池 あれをみて、「政治は選挙で変えられる」という思いを強めた方は少なくないのでは。投票率が7割を超えたでしょう。普段は投票に行かない人が投票所に行けば政治は変わるんですよね。
昨年の参院選は過去最低に近い投票率でした。そこに私たちが乗り越えなければならない課題があります。多くの人が投票所に足を運ぶようになるには、期待と展望をもっていただくことが大事だし、そのためには共産党が頑張るとともに、野党共闘がつくる政治の姿を、もっと具体的に、もっとわかりやすく示していかなければなりません。
自分の一票で政治が変わるという希望が広がれば、投票率も上がり、政権を変えることができると思うんです。
ツルシ 昨年末、立憲民主党や国民民主党との党首会談があったじゃないですか。あれは一歩前進と考えていいんですか。
小池 一歩一歩前進しています。この4年間で3回の野党共闘の選挙に取り組んだのですが、最初の頃とは様変わりですよ。たとえば昨年の参院選で、立民の枝野幸男代表が、福井で野党統一候補になった共産党の山田かずお候補の応援に駆け付け、私が一緒に並んだ。参院選後の高知県知事選で枝野さんは、志位さんと一緒に並んで訴えました。
一歩ずつ前へ、です。
ワタナベ テレビ討論で、枝野さんが「(もし福井県民だったら)福井で共産党候補に投票するんですか」と安倍首相に聞かれて、「投票します」と言ったのはすごかったですね。
小池 少し前には考えられなかったことですね。共産党との壁は徐々に低くなり、「石の壁」が「木の壁」になり、今では「カーテン」ぐらいになってきた。
ワタナベ 共産党が入らなかったら、「民主党政権の悪夢」といわれてしまいますね。
小池 それが、安倍首相が野党を攻撃する時の決まり文句です。それに対する最も効果的な反撃は、今つくろうとしている政権は、かつての民主党政権の復活ではない。「市民連合」との13項目の政策合意を土台にした、自民党政治とは全く違う政権であり、その最大の担保は共産党がそのなかにいること。立憲民主党や国民民主党の人には、共産党と一緒にやっていることをもっとアピールしたらと言っているんです。
世界は変わってきている―一握りの大国が支配する時代は終わった
ツルシ 外交に関してですが、アメリカ、中国、ロシアなどの大国主義、覇権主義とどうつきあっていくのか興味があるんです。
小池 世界は本当に変わってきていると思うんですよ。一握りの大国が世界を支配する時代が終わり、一つひとつは「小さな国」が、国際政治の舞台で実に大きな力を発揮しています。国連の会議に、志位さんは2回参加していますが、1回目の2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議ではフィリピンの外交官が、2回目の核兵器禁止条約を採択した会合(2017年)ではコスタリカの外交官が議長を務めていました。それぞれ、決して「大きな国」ではありませんが、世界政治を動かしていました。
それに比べて、日本政府は大国に対してまったくモノが言えず、世界での存在感ゼロ。トランプ米大統領にも、ロシアのプーチン大統領にも、中国の習近平主席にもペコペコするばかり。こんな外交でいいのかが問われています。
ワタナベ 「赤旗」を読んで、国際面にはびっくりしましたね。一般紙と明らかに視点が違う。世界は市民の力で動いているというのが、「赤旗」の国際面を読めばすごくよくわかる。
小池 いま国連の会議では、政府だけではなく、NGO(非政府組織)などが「市民社会」の代表として、大きな役割を果たしています。こうしたことを伝えるのも「赤旗」の大きな役割です。
実は、共産党が国連会議に参加する際も市民社会の一員として参加しているのです。そして、他国の政党とは、共産党だけではなく、与党であっても野党であっても、世界の平和と民主主義のために共通する課題がある党とは、対等平等の立場で交流しています。
人間の豊かな個性が全面的に花開く未来社会へ
ワタナベ 若い人たちに、共産党が考えている未来社会とはどういうものかと聞かれますよね。小池さんはどう説明されますか。
小池 私たちは、未来社会について、「かくあるべし」という「青写真」を描いて未来の世代をしばることはせず、これから直面する世代が解決する問題だと考えています。今言えることは、私たちが取り組んでいる一つひとつのたたかい、たとえば人間らしく働けるルールをつくることとか、税や社会保障の制度を、暮らしを守る仕組みに変えていくとか、そうした一つひとつのたたかいが、未来社会をつくることにつながるということです。
そうしたたたかいを進めていく中で、資本主義の仕組みのもとでは、どうしても解決できない問題が出てくるでしょう。党大会に提案している綱領の一部改定案でも述べているのですが、貧富の格差拡大や、地球規模で深刻になる気候変動などです。
もちろん資本主義のもとでも解決できるし、解決しなければならない問題はたくさんあります。しかし、企業のもうけを最優先する資本主義のもとでは、限界もあります。そうした時に、そこからもう一歩踏み出して新しい社会になれば、抜本的な解決がはかれるのではないか。
もちろん、資本主義社会のもとで築かれた価値ある成果は、すべて受けつぎます。とりわけ、発達した資本主義国から社会主義・共産主義に踏み出す場合には、「高度な生産力」や「経済を社会的に規制・管理するしくみ」「国民の生活と権利を守るルール」「自由と民主主義の諸制度」、そして「人間の豊かな個性」などが受け継がれ、さらに発展するでしょう。資本主義のもとでの成果が全面的に花開く社会が、私たちのめざす未来社会です。
ワタナベ いまAI(人工知能)がかなり問題になっていますけれど、悪い社会状況のもとでは戦争とかに悪用されますが、政治の力でいいように利用すれば社会づくりに貢献できますね。
小池 高度に発達した科学技術を、企業の利潤追求のためだけではなく、みんなの幸せのために使うためにも、資本主義という枠組みから抜け出すことが必要になる時が、必ず来ると思います。
ツルシ 世界史のなかでも、前人未到の道を進むと…。
小池 日本のように高度に発達した資本主義国が、そこから一歩すすんで新しい社会に向かうという経験を人類は持っていないので、まさに「未踏の領域」ですよね。でも、いまの資本主義のままで人類の歴史は終わりなんでしょうか。私はそんな寂しいことにはならないのではないかと思うのです。そこから一歩抜け出せば、人類がかかえるさまざまな問題を、根本的に解決できる社会が実現するのではないか。
そういう希望ある未来をご一緒につくりましょう。