赤旗2019年10月7日付
日本共産党の小池晃書記局長は6日のNHK「日曜討論」で、関西電力の原発マネー還流疑惑や消費税増税、日米貿易協定、憲法などの臨時国会の焦点課題について、各党の代表と議論しました。
関電疑惑
原発マネーの闇 国会で徹底解明
まず各党に臨時国会に臨む姿勢が問われました。自民党の稲田朋美幹事長代行は、「全世代型社会保障改革」や北朝鮮のミサイル問題、日米貿易協定とともに憲法改正を議論したいと述べました。立憲民主党の福山哲郎幹事長、国民民主党の平野博文幹事長は、共同会派結成を力に徹底的に行政監視機能を高めていくと話しました。
小池氏は「暮らしの問題、消費税の問題とともに“原発マネーの闇”を徹底解明しなければならない」と強調しました。関西電力の原発マネー還流疑惑について「国民が支払った電気料金が電力会社の役員に還流した重大な問題だ」と指摘。国税局が動き、関電の社内調査も行われていたのに監督官庁である資源エネルギー庁が「何も知らなかった」と言っていることについて「監督責任どころか存在意義が問われる」と批判し、「こういう時こそ国会の出番だ。関係者の国会招致や集中審議で全容解明すべきだ」と語りました。
さらに、全国11ある電力会社が5兆円規模の再稼働に向けた工事を発注していることにふれ、「安倍政権が旗を振る原発再稼働で『再稼働利権』が生まれた。利権まみれの再稼働をやめ、原発ゼロに向かうべきだ。国会で徹底的に議論したい」と表明しました。
立民・福山氏は「関電の問題は国会の最重要課題となった。再稼働が適切なのかを含めエネルギー政策を考えるきっかけになった」と述べました。自民・稲田氏は「(関電が)第三者委員会を設置して真実の解明をする」として、当面は関電の対応を見守る姿勢を示しました。
消費税引き上げ
追加対策を批判 5%に戻すべき
続いて1日に強行された消費税率10%への引き上げが議論となりました。
自民・稲田氏は「下振れリスクが顕在化したときは果断に対応していく」と、景気が悪化した時には追加の経済対策を行うと述べました。
これに対して小池氏は「(政府は)増税分を全部戻すと言いながら、その上、追加の対策をとるならば、いったい何のための増税なのか」と批判。消費税導入後で消費税収の総額が397兆円に達する一方で、法人税が298兆円減、所得税が275兆円減となったことを示し、「消費税は富裕層・大企業の減税に使われた」と語りました。そして、最悪の不公平税制である消費税は廃止すべきだが、まずは5%に減税すべきだと述べ、大企業や富裕層に応分の負担を求めれば財源はつくれると提案。「その方向で野党が一致して取り組めるよう努力したい」と語りました。
自民・稲田氏は、消費税を上げることは政治的には非常なリスクだが、安倍政権下で2回引き上げたと胸を張りました。
立民・福山氏は「『軽減税率』の導入で地域の混乱も出ている。増税が日本経済にどう悪影響を及ぼすか注視したい」と指摘しました。
日米貿易協定
FTA交渉開始 重大な約束違反
9月25日に合意された日米貿易協定が議論になりました。米国産牛・豚肉の関税を大幅に引き下げ、日本の完成車や自動車部品の関税削減は先送りされた日米貿易協定の結果について、自民・稲田氏、公明党の斉藤鉄夫幹事長は「大きな成果だ」と評価。立民・福山氏は「トランプ氏の大統領選に向けて日本が譲歩せざるを得なかった結果だ」、国民・平野氏は「国益に沿っているとは思わない」と述べました。
小池氏は「トランプ大統領の要求に日本側が一方的に譲歩した結果だ」と批判しました。そして、日米共同声明で自由貿易協定(FTA)交渉の開始に合意したことについて「政府は『日米FTAはしない』と国民と約束していた。重大な約束違反だ」と指摘。日米貿易協定で日本の農業に与える影響の試算すら政府が示していないことに触れ、「日本農業の被害の数字も出さず、協定を国会で承認することはありえない。政府として影響試算を出すべきだ」とただしました。
これに対して自民・稲田氏は「農業に与える影響はしっかり見ていかなければならない」と述べるだけで、影響試算を提示することについて明言を避けました。
他の野党からも「アメリカの牛肉・豚肉の開放はどの程度日本の畜産に影響するのか議論が必要だ」(立民・福山氏)、「経済影響を出さない限り、協定は批准すべきでない」(国民・平野氏)などと、協定を議論する前提に影響試算を政府として提示することが必要との認識を示しました。
憲法改定
参院選の結果は改定推進でない
改憲問題について議論する中で、自民・稲田氏は「(前回参院選の結果は)憲法の議論を進めるべきということだ。骨太の議論を憲法審査会で行いたい」と表明。公明・斉藤氏も「憲法は国の基本法だから不断に国会で議論すべきだ」と述べました。日本維新の会の馬場伸幸幹事長は「憲法審で憲法改正の議論をさせてほしい。自民党は議論ができる準備を整えてほしい」と改憲論議をあおりました。
小池氏は「参院選では改憲勢力が3分の2を割った。選挙の結果が改憲を進めよという民意だというのはとんでもない。どんな世論調査でも安倍政権に望むもので一番最後に出てくるのが改憲だ」と批判。政府の「検閲」だと指摘される、あいちトリエンナーレへの補助金不交付の問題や、かんぽ生命の不正販売を報道したNHKに日本郵政グループが圧力を加えた問題など憲法に関わる問題が噴出していることを示した上で、「こうした憲法に関わる問題が噴出しているのだから、『改憲』の議論ではなく憲法をいかに守り、生かすかを議論すべきだ」と訴えました。
立民・福山氏は「国民投票のCM規制の問題やあいちトリエンナーレへの補助金不交付問題は、憲法に密接した問題だから、憲法審で議論すべき課題だと思う」と述べ、国民・平野氏は同党が提案した国民投票法改正案の対案を審議するよう求めました。
論戦の重点は
野党連合政権の構想を示したい
最後に、国会論戦で何を重点的に訴えるかが問われ、小池氏は憲法、関電疑惑、消費税増税、災害支援などを挙げ、「どの問題でも野党が結束して論戦にあたることが大事だと思う。それを土台にして安倍政権に代わる野党連合政権構想を国民に示すための議論を深める国会にしたい」と表明しました。