赤旗2019年7月15日付
小池書記局長の発言
参院選投票日(21日)まで1週間となった14日のNHK「参院選特集」では、日本共産党の小池晃書記局長が、消費税、年金、外交、憲法など焦点問題で与野党幹事長らと議論を交わしました。
選挙戦の手応え
1票で政治を変えようの訴えに非常な手応え――
市民と野党の共闘で希望持てる社会、共産党の提案も訴え躍進したい
冒頭、各党の選挙戦の手応えを問われ、小池氏は次のように述べました。
小池 “年金だけでは暮らしていけないから2000万円貯金をしなさい、その上消費税を上げさせて”―こういう政権に怒りが広がっているのを感じています。「2000万円貯金をするより、あなたの1票で政治を変えるほうが簡単です」という訴えに手応えを非常に感じているところです。
市民と野党の共闘で、国民だれもが希望を持って安心して暮らせる社会に転換しようと。そのなかで共産党の提案も大いに訴えて躍進をしていきたいと思っています。
消費税引き上げ
景気後退の時に消費税増税などとんでもない――
大企業・富裕層優遇税制を見直せば財源は出てくる
安倍政権の経済政策「アベノミクス」と10月からの消費税10%増税の是非について議論に。自民党の萩生田光一幹事長代行、公明党の斉藤鉄夫幹事長はそろって“アベノミクスの成果”を強調。「消費税では国民に負担を強いることになるが、保育の無償化などを行う。(増税の)条件が整えば予定通りに進めたい」(萩生田氏)、「(消費税増税は)実行すべきだ」(斉藤氏)などと述べました。これに対して小池氏は次のように発言しました。
小池 「アベノミクスの成果」とおっしゃるけど、萩生田さん、地元の(東京都)八王子市で景気がよくなったという声があがっていますか。私は、そういう実感はないと思いますよ。景気が後退しているときに消費税増税をするなんてとんでもないことで、これはもう中止すべきだと思います。
それから、「幼児教育無償化」とおっしゃるけれども、その財源は結局消費税なわけで、子育て世代にもっとも厳しい税金で財源をつくるのはだめです。消費税に頼らない、暮らしの応援が必要だと思います。
「なんでも消費税」ではなくて、例えば、中小企業の実際の法人税の負担率は18%です。一方、大企業は10%です。この優遇をただせば、4兆円出てきます。それから、株で大もうけしている富裕層に平等に所得税を求めれば、3兆円以上出てくるわけですね。
こういうことをやって、暮らしや教育にお金を回すという政治が必要で、私たちは財源を示しているのに、これを言うと安倍さんは、「ばかげた提案」だというふうにおっしゃるんですね。しかし、この景気のなかで消費税を増税することこそ、私はもっとも「ばかげた提案」ではないかなと思わざるをえません。
10月からの消費税10%増税については他の野党も「景気を冷え込ます。凍結すべきだ」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)、「景気を中折れさせないために10月の増税はすべきではない」(国民民主党の平野博文幹事長)などとそろって反対しました。
年金など社会保障
一番の問題は年金7兆円が削られるマクロ経済スライドを続けていいのか――
「減らない年金」の提案の検討を
大争点になっている年金問題で自民・萩生田氏は、年金を実質的に7兆円削減する「マクロ経済スライド」によって「(年金)制度そのものはきちんとしたものができた。負担を増やさずして給付を増やすという打ち出の小づちはない」などと発言。小池氏は次のように述べました。
小池 一番の問題は、基礎年金をこれから自動的に7兆円も削る「マクロ経済スライド」をこのまま続けていいのかだと思います。私たちはこれをやめて、「減らない年金」にする。あわせて低い年金の緊急底上げをしようと提案しています。
やらなければいけないことはいろいろあると思っていて、例えば高額所得者の年金保険料です。いま年収1000万円を超えると、2000万円でも1億円でも(保険料は)一定になるわけです。これを見直していけば、1兆円単位でお金が出てくる。健康保険料の上限は、21世紀に2回も見直しているのに、なんで年金はこのまま放置していいのか。社会保障審議会も「検討すべきだ」といっているのだから、これは前向きに考えるべきです。
それから、200兆円の年金の積立金=給付の4年分、これをすぐに全部とはいいませんけれども、計画的に給付に充てていくべきです。ところが政府は、高齢化のピークは2050年なんだけど、それを超えて増やし続けるっていうんですね。こんなばかなことはやめて、年金(給付)に充てるべきだと思います。
それから低賃金を打開する。正社員を増やしていく。このことによって年金の財政を支えていく。こういう提案をわれわれはしています。ぜひ検討していただきたい。
小池氏の具体的提起があったにもかかわらず、与党側は「年金額が下がるというのはまやかしの議論。国民を不安に陥れるものだ」(公明・斉藤氏)と発言。「打ち出の小づちはない」といいながら、「6年間で44兆円の積立金の運用益を得た」(自民・萩生田氏)と矛盾した発言をしました。
イラン沖の「有志連合」問題
イランへ自衛隊を派遣すべきではない――
日本は憲法生かした外交努力で、この地域の平和実現に貢献を
6月に発生したホルムズ海峡付近でのタンカー攻撃事件を受け、トランプ米政権が、イラン沖合の海上交通路で民間船舶の航行を守る多国籍軍の「有志連合」を結成すると表明した問題が議論になりました。自民・萩生田氏は「現行の憲法、法律に照らしてただちに自衛隊を派遣する環境にはない。ただ、日本に(石油を)輸入する船の8割があの海峡を通っているので日本が当事者でないという振る舞いはできない。できることは何なのか慎重に考えていきたい」と自衛隊派遣に含みをもたせました。小池氏は次のように述べました。
小池 「有志連合」が結成されて、多国籍の軍隊が展開すれば軍事衝突の危険が現実のものになってきます。日本が「有志連合」に加わって自衛隊を派遣すれば、これは米軍と一緒に戦争に参加させられるという危険が高いと思います。
自衛隊を派遣すべきではありません。
もともとイランをめぐる危機というのは、トランプ大統領がイランとの核合意から一方的に離脱したことから始まったわけです。日本の役割は、トランプ政権に対して、核合意に戻るよう求めることだと思いますし、イランに対しても、緊張を高めないように自制を求めることだと思います。日本は歴史的にイランとは友好関係があるし、イスラム教との敵対の歴史のないという、非常に優位な立場に立っているわけですから、その役割を発揮する外交努力こそいま求められています。ヨーロッパ諸国と連携をして、憲法9条を生かした平和外交で、この地域の平和の実現のために努力するのが、いまの政権の責任だと思います。
「石油の確保」というのであれば、軍事衝突が起こったら、「石油の確保」なんて困難になりかねないのですから、やっぱり軍事衝突を起こさないという外交努力をやるべきだと思います。
公明・斉藤氏は「ソマリア沖では自衛隊が海賊対処法に基づくゾーン・ディフェンスなどを行っている。これらも一つの例になるのではないか」と自衛隊派遣に言及しました。これに対し社民党の吉川元幹事長は「海賊対処法の対象は海賊であり、アメリカはイランにも行っている。すると(対象は)『国および国準(国に準じた組織)』になる」と指摘すると斉藤氏は「これら(海賊対処法など)を参考にしながらこれからわが国の貢献のあり方を考える」と述べました。小池氏は「公明党は(自衛隊を)派遣することを許すんですか」と厳しく指摘しました。
日韓関係
政治的紛争解決に貿易関係を使うのは禁じ手――
朝鮮半島非核化の動きのなか、日韓関係改善の努力を求めたい
外交問題では、日本政府が発表した韓国向け半導体材料の輸出規制強化も議論になりました。今回の輸出規制強化について自民・萩生田氏は「経済産業省が行った検査のなかで著しく不適切な事案を確認したからだ」と「徴用工問題」とは無関係のように述べました。しかし、7日にフジテレビ番組で行われた党首討論で安倍晋三首相は「徴用工問題」をあげ、その報復的な措置である見方を示しています。小池氏は次のように述べました。
小池 徴用工と関係ないとおっしゃるけれども、安倍首相は先週の党首討論で「徴用工の問題で、条約(日韓請求権協定)を守らない国であれば、貿易管理をしているかどうかわからないと考えるのは当然だ」といっているわけです。この発言に示されるように、今回の措置は、元徴用工問題に対する報復措置であることは明らかですよ。政治的紛争の解決に貿易問題を使うというのは、これ絶対にやってはいけない「禁じ手」ですよ。
だいたい、安倍さんは、「彼らがいっていることは信用できない」といって、話し合いの対象ではないといっているんだけれども、これでは日韓関係はますます悪化するし、これでは元徴用工の問題だって、あるいは輸出管理の問題だって解決しないと私は思います。
いま北朝鮮とアメリカの間で首脳会談も行われて、朝鮮半島で非核化、平和体制を構築するという動きが起こっているときに、日韓のいまの状況でいいんでしょうか。私は、北東アジアの平和と安全保障にとっても、これは重大なマイナスになりかねない。この日韓関係を打開する必要があると思います。早急に改善をしていく努力を安倍政権には求めたいと思います。
安倍9条改憲
無制限な武力行使こそが安倍改憲の真の狙い――
絶対に許してはならない
安倍首相が主張している憲法9条に自衛隊を明記する「安倍9条改憲」と、トランプ大統領が日米安保条約を「不平等な条約。変える必要がある」と語った問題が議論になりました。小池氏は、選挙中に行われた党首討論での志位和夫委員長と安倍首相とのやりとりも示して、安倍9改憲の真の狙いを指摘しました。
小池 安倍首相は“憲法を議論する党か、しない党かが争点だ”というふうにおっしゃいますが、これは違います。憲法9条に自衛隊を書き込む安倍首相による9条改憲を許すのかどうかということが、争点だと思います。
トランプ大統領が、“日本の若者がアメリカのために血を流さないのは問題だ”“不公平だ”といった。党首討論で、わが党の志位委員長が、「米軍のために血を流してたたかえるようにするのか」と聞いたら、総理は「憲法の制約があって(日米安保条約を)完全な双務性にすることはできない」「集団的自衛権のフル(全面的)な行使はできない」とおっしゃったんですね。すなわち、これは裏返していえば、フルな集団的自衛権の行使、無制限な武力行使が、安倍改憲=9条に自衛隊を書き込むということの狙いだといっていることになります。これはもう語るに落ちたという話だと思いますよ。
いま9条を生かした平和外交の役割が求められているときに、9条を壊して何の制約もなく海外で武力行使ができるような国にするのは絶対に許さないということを、私たちは訴えていきたいと思っています。
憲法の議論は今も大いにやるべきだしやっている、改憲の議論は必要ない――
安倍首相は憲法にもとづいた政治をすべきだ
自民・萩生田氏は「野党統一候補のなかには、憲法改正の議論が必要だ、決して護憲でないとおっしゃる候補もいる。(5野党・会派が市民連合と合意した)13項目の共通政策には、改憲発議そのものが反対だとあり、そういう人を選ぶ選挙だと。われわれは改憲をしたいという姿を国民に示していきたい。憲法審査会でぜひ議論を」と、野党がまとまっていないように描き、改憲案の論議を憲法審査会で進めるよう主張しました。これに対し小池氏は次のように述べました。
小池 憲法審査会というのは、国会法102条で、「憲法改正原案」をつくるというのが役割なんですね。憲法の議論は大いにやるべきだし、われわれもこの選挙で一番たぶん憲法について語っていると思いますよ。改憲の議論は必要ないといっているんですよ。国民のなかから澎湃(ほうはい)と「憲法を変えるべきだ」という声が起こってくるという状況ではありませんから。
いまどんな世論調査をやっても、安倍政権に望むものと聞くと一番最後の方になってしか「憲法を変える」は出てこないわけですね。そういうときに、憲法によって縛られている首相が、一番先頭に立って改憲の旗を振る。こんなひどい立憲主義の否定はないわけですよ。安倍さんには、憲法について「変える議論」とかという前に、「憲法を守ってください」「憲法を実現してください」といいたいですね。
野党はさっきバラバラだとおっしゃったけど、そういう考え方で、立憲主義を否定するような、こういう安倍政権のもとでの改憲の議論というのは、われわれはだめだというふうにいっているわけで、そこはご心配なく、一致しておりますので。
選挙戦終盤にどう臨む
全32の1人区で市民と野党の勝利、比例区と複数区で、共産党を躍進させ、新しい政治をつくっていく
最後に、選挙最終盤にどう臨むか問われ、小池氏は次のように決意を語りました。
小池 全国32ある1人区で野党の統一候補が自民党と一騎打ちでたたかっています。
野党はバラバラだと安倍首相はおっしゃるけれども、市民連合と13項目の政策合意も確認をして、共通の旗印は明白です。
私も連日、立憲(民主党)や国民(民主党)の候補者の応援に飛び回っておりますし、先日は立憲の枝野(幸男)代表に、共産党公認候補の応援に福井まできていただきました。共闘の姿が浮かび上がるなかで、期待が高まっているということを感じています。
1人区では市民と野党の共闘の勝利、そして複数区、比例代表選挙で共産党を躍進させて、安倍政権に代わる新しい政治をつくっていく。そのために全力を尽くしたいと思います。
共産党の候補者の55%が女性です。ジェンダーの平等、これをしっかり訴えて勝利を、躍進をというふうに思っております。