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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]
「いつでも元気 2004.10 No.156」より

Dr. 小池の国会奮戦記
介護保険制度が危ない! ヘルパーの家事援助が自立を妨げる?

 秋に向け、どんなとりくみが求められているか、小池晃参議院議員と肥田全日本民医連会長が大いに語ります。

 肥田 原水禁世界大会で広島に行ったのですが、小泉首相の発言には本当にビックリしました。「非核三原則を守ります。平和憲法を守ります」。私は一瞬、心を入れ替えたのかと(笑い)。しかし一国の首相が、国民の思いに背く政策をすすめながら、しらっと平気でうそをつく。その姿勢が非常に気になりました。

 小池 日本の国民の平和を求めるエネルギー、核兵器は許さないという思いは本当に強い。だからこそ小泉首相もあの場ではそう言わざるをえないんですね。

 肥田 しかし参議院選挙の結果は、共産党や社民党という護憲を掲げる政党が議席を減らしてしまいました。

 小池 そうですね。私はむしろ、自民党政治があまりにもひどいためではないかと…。将来はともかく、今すぐ少しでも変えてくれという国民の思いが、「二大政党制づくり」の流れのなかで、民主党に向いたのではと考えているんですが。

 肥田 民主党の岡田代表は、選挙直後にアメリカに行って、「憲法を変えます」「海外で武力行使ができるようにします」と約束してきましたね。

 小池 中川自民党国対委員長もアメリカに行き、アーミテージ国務副長官から、憲法九条は日米同盟の妨げだと言われたでしょう。それをそのまま伝書鳩みたいに日本に伝えましたが、あの席には民主党の国会議員も同席していたんですよ。

 肥田 消費税増税もふくめて全部、財界の主張を取り入れた政策で、少し手法が違うというだけの「二大政党」ですね。

 九条を守ろうということでは、加藤周一さんらの「九条の会」が発足し、日本の知性と良心は健在だと実感しました。「『九条の会』を支持する医師・医学者の会(仮称)」を立ち上げる動きもできています。看護師の会とか、放射線、検査、薬剤、食養など、職能関係や青年、地域でもどんどん広げたいですね。

憲法改悪は容易ではない

 小池 そうですね。憲法九条の問題で言うと、参院選挙の結果を見て、七割、八割の国会議員は改憲派だ、もうダメだと悲観してる人が結構多いんです。しかしこの問題はそう簡単じゃない。向こうも意気揚々とすすめられる状況でもないんだということは、強調したいのです。

 憲法改定となると、変える中身も一致させなくてはいけませんが、今は中身はバラバラです。あれを一つの改憲草案にまとめるのはそれほど容易ではない。

 AとBとCとあって、Cが絶対護憲だとします。今はA+Bが改憲賛成で大きく見えるけど、AとBの間には同じ「改憲」でもかなり意見の開きがあります。一定、方向が決まってくると、賛成はAだけになってB+Cが反対に回るというような力関係なんですね。まだまだたたかいの余地はある。

 もう一つ、今までの改憲論議は「日本を守るための自衛隊を正式に認めよ」がほとんどでした。つまり日本防衛論です。

 ところが台湾海峡にしても朝鮮半島にしても、問題解決の兆しが見えつつある。東アジアのなかで平和の枠組みができれば、今までの「日本有事のための改憲論」では通用しなくなります。するとアメリカの戦争に参加するための改憲という本質がむき出しにならざるをえない。

 今でも「憲法は見直しても、九条は変えるな」という声は依然として過半数ですから、この問題は、改憲をすすめている人たちにとっても両刃の剣なんです。だから、決して悲観することはない。大いにがんばろうと言いたいのです。

 肥田 日本の医師の圧倒的多数は、イラク戦争や九条改定に反対ですからね。

 世界的な流れでみても、アメリカ、イギリスはかなり孤立しています。アメリカの要請に従ってイラクに軍隊を派遣しているところは三十数カ国で、ぞくぞくと撤退を始めている。そのなかでなぜ日本が自衛隊を送らなければいけないのか。人道支援というけれど、実体は占領政策を補うだけだとはっきりしてきた。

 小池 そもそも戦争の理由だった大量破壊兵器が、イラクにはなかったということで完全に決着がつきました。アメリカでもイギリスでも。小泉首相だけが「そのうち見つかる」といったまま、未だにそれを訂正していない。アメリカ言いなりのために真実すら見ないというのは国際的に恥ずかしいことです。

「公平」を口実に負担増

 肥田 この秋、大きくなるのが介護保険見直しの問題ですね。ところがその見直しの主要な論調は、財政がピンチだから、利用を制限しようということで、国民の間にもっと制度を定着させようということじゃない。非常に残念です。

 小池 介護保険見直しの議論の特徴は、四月に日本経団連(経済団体連合会)が出した「介護保険制度に対する意見書」が、そのままいろいろな形で出てきているということです。キーワードは二つ。「公平さ」と「自立支援」です。

 当初案では、いま一割の自己負担率を二〜三割に引き上げるという話が出ていました。高齢者医療はすでに所得の高い人は二割負担だ、介護保険を支えている若年者の医療保険は三割だ。介護保険が一割負担というのは公平でないと。また在宅は光熱費や部屋代を自分で負担しているのに、施設入居者が負担しないのは不公平だと。「公平さ」ということを基調にして、結局、負担増を強いているんです。

 「自立支援」については、介護保険というのは「自分でがんばって自立していくことを応援する仕組みなんだ」とねじ曲げる。介護保険が始まるときは、「社会が介護を支援する」といいましたよね。これだって本来なら国の公的責任でやるべきところを、「社会が」と置き換えたのですが、さらに社会的責任も捨てて「自己責任」にしてしまった。

 肥田 そして「介護予防」というのが出てきました。予防は大切ですが、何をどのようにするのかがわかりにくい。保険制度になじまないでしょう。

 小池 予防と言えば聞こえがいいんですが、ねらいは、膨らんできた財政を抑えるためにいちばん利用者が増えている軽度の要介護者をはずしてしまおうという話です。要介護度別に並べてみて、悪化した人の比率が、要支援と要介護1が高い。だからこれは介護サービスの意味がなかった、必要なのは予防だというんですが、こんなばかな話はない。年をとれば、ある程度、悪くなるのは当然でしょ。

 肥田 高齢者が対象なんですからね。

 小池 実態調査を一切していない。机上の空論なんです。どういう人が介護保険で良くなって、あるいは悪くなっているかという実態をまとめてぶつけるということが、本当に大事になっています。

 来年の通常国会に見直しの法案を出すといっていますから、これからが勝負です。

 肥田 先日、長野や山梨で先進的に行なった実態調査にもとづいて、厚労省交渉をやりました。今サービスされている人たちがサービスをはずされたらどうなるのかという調査です。これを全国的な規模でやって、介護度の軽い人たちのサービスがなくなったら、寝たきりの方向にすすんでしまう危険性が非常に高いことを明らかにしたい。

 介護保険が始まるとき、地域でいろいろな団体や共同組織と自治体交渉とか、国に対する署名とかしましたね。今回も介護制度をどうしたらいいのか、実際に介護を受けている人、介護している人たちの本音をどんどん出してもらって、改善要求につなげていく、そういうとりくみをしていきたいと思います。

 小池 大阪府の医師会の会長さんなども、政府の動きは当初の介護保険制度の概念から逸脱している、個人的には大反対だと言っています。こういう声は、まじめに高齢者の医療・介護をとりくんでいる人から当然出てくると思います。民医連のイニシアチブを期待しています。

写真
語りあう小池さん(右)、
肥田さん(写真・酒井猛)

介護保険見直しは利用者の実態を明らかにしてたたかおう

国の施策が貧富の差を拡大

 小池 生活保護もねらわれています。来年度予算で社会保障の自然増を、二二〇〇億円も削減するというのですが、その大部分は生活保護を削ると言う。出されているのは、母子加算の廃止と、生活保護制度に対する国庫負担を、現在の四分の三から、三分の二に削ることです。

 肥田 残りは自治体の負担に?

 小池 ええ。これでだいたい一八〇〇億円ぐらい削減されます。二二〇〇億円の大半を生活保護で削って、あと介護、それから医療だと。特定療養費や食事代の見直しがささやかれています。

 生活保護に対する国庫負担率は四分の三と非常に高い。これは、憲法二五条で保障した生存権の最後のよりどころだから国が責任をもつということなのです。国の負担を引き下げたら、自治体も苦しいから、まさに自治体の裁量でどんどん生活保護のカットがすすむ。自治体の認定基準をきびしくする方向になります。

 母子加算を廃止するという理由がひどい。一般の母子家庭と、生活保護を受けている母子家庭の生活水準を比べると、生活保護を受けているほうが生活水準が高い、だから「不公平だ」というんです。これが自立を阻害していると。母子家庭の自立を阻害し就労を阻害していると。

 一般の母子家庭が、生活保護水準以下でくらしているという実態こそが問題なのに、そこを引き上げるのでなく、引き下げて公平にすると言う。介護保険とまったく同じ、自立支援と公平の論理です。

 肥田 今、生活がきびしいから生活保護を受ける人が増えています。しかしヨーロッパと比べると日本の生活保護受給率というのは非常に低い。イギリスなどでは、国民の一割近くが生活保護を受けています。日本の基準は今も非常にきびしいのに、それを下げるなんて論外です。すべてが財政の論理で、削られていく。

 ところが実際には、もうけているところは非常にもうけていて、そこからは税金はほとんどとらないという状況になっていますね。この格差、貧富の格差がますます助長されるのではないか。

 小池 国の予算をみても、財政の赤字は減らさなくてはいけませんが、削るのはまず無駄な出費であるべきです。ところが、公共事業を削ると言いながら、整備新幹線の計画は復活させ、関西空港の二期工事もやろうとしている。軍事費は聖域で、自衛隊員の人件費も兵器代も、それから法律にない、米軍への「思いやり予算」も、一切カットの対象ではない。

 景気回復していると言うけれども、一番その光が当たってない人にしわ寄せして、つじつま合わせをしようとする。こういうやりかたでは、まさに国の財政自体が、貧富の差を助長していく、所得格差を拡大することになります。

 肥田 民医連の病院などは一生懸命やって何とか黒字を出したとすると、その黒字の半分近くは税金でもっていかれます。しかしトヨタは一兆円もうけても、消費税の戻しなどの優遇がある。

 大企業はリストラなどをやりながら、もうかる仕組みがある一方、庶民は増税にあえぎ、何か利用しようと思えば、医療も介護もすべて利用料が上げられる、保険料も上げられる。こういう仕組みに、いつまで国民は我慢できるのか。

未来切り開く潮流が

 小池 近鉄バッファローズ私設応援団主催の集会というのに行ったんです。みんな元気で、日比谷野音でマイクなしで声が響きわたる。一握りの新聞の社長が勝手にプロ野球を動かすなんて許さんと。

 こういう動きは本当に象徴的ですね。たかが選手、たかがファンとか言って、財政の論理・企業の論理だけでリストラみたいなことをやるわけですから、これでいいのかという疑問が起きる。いろいろと気がつくきっかけというのは、今いっぱいあるのではないでしょうか。民医連の職員も、日々の仕事のなかで気づくことも多いのではないでしょうか。

 肥田 北海道では、たとえば患者さんがお金を払えないとか、治療を中断してしまっているとか、そういうことが憲法の何条にあたる問題なのだろうと考えていく、そういうとりくみをしています。日常的に、つねに憲法に立ち返って仕事や生活をするということが大切ですね。

 小池 民医連が、憲法九条、二五条にかけて、九日と二五日を統一行動デーにすると。あれはいいですね。若い職員も元気ですね。各地でいろいろな運動の先頭に青年が出てきていて、そのかなりの部分が民医連の職員で、励まされます。

 肥田 若者たちが自ら、自分たちでものを考え、未来を切り開くというふうに動き出していて、非常に頼もしい。

 日本の政治の局面だけ見ているとどうなってしまうのかと思いますが、若者が元気だということ、それに世界的な政治の流れからいうと、アメリカの一国主義が孤立しはじめ、非同盟諸国とか、NGO(非政府組織)とかNPO(非営利組織)とか、そういう動きが活発になって、戦争勢力を押し込める状況も生まれてきています。まだまだ世の中、捨てたものではない。この秋も元気でがんばりましょう。

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